リ・スキリング等教育訓練支援融資制度徹底解説

マネー

社会人のキャリアアップを支援する制度として、2025年10月1日から 「リ・スキリング等教育訓練支援融資制度」 がスタートします。

リ・スキリングとは、社会や産業の変化に応じて、新しい職種や分野で必要とされるスキルを学び直すことを指します。

既存の「職業訓練受講給付金」や「求職者支援資金融資」と同じく、雇用保険の対象外の人々も利用できるこの新制度では、より専門性の高い職業訓練を受けられるほか、訓練修了後の成果に応じて返済が一部免除される仕組みも設けられています。

今回は、この新しい融資制度の概要や利用条件、さらに気になる返済免除の内容について解説します。

制度の概要

「リ・スキリング等教育訓練支援融資制度」は、国が新たに導入する教育・生活支援のための公的融資制度です。ハローワークの認定を経て、全国の労働金庫(ろうきん)から融資を行います。特徴的なのは、授業料や教材費といった教育費に加え、訓練期間中の生活費も融資の対象になることです。
また、一定の条件をクリアすると、借り入れたお金の返済が一部免除される、インセンティブ措置が適用されます。

支援の対象者

この融資制度は、担保や保証人が不要で、収入要件もありません。しかし、誰でも利用できるわけではなく、いくつかの条件が定められています。

1.雇用保険の被保険者や受給資格者ではないこと

この制度の最大の目的は、雇用保険制度の対象外であった人を支援することにあります。具体的には、今まで特定の事業主に雇用されていなかったフリーランス、1週間の労働時間が20時間未満の短時間パートやアルバイト、かつて就業していた専業主婦や療養者、雇用保険の受給が終了した離職者などが対象となります。

2.過去に3年以上の就業経験があること

訓練開始時点で、過去に3年以上の就業経験があることが必須の条件です。就業経験は直近のものである必要はなく、証明書類によって確認できれば、何年前の就業経験であっても通算3年以上であれば条件を満たします。ただし、昼間学生であった期間の就業経験はカウントされないので注意が必要です。

3.年齢要件

返済を前提とした制度であるため、段階的に年齢の制限が設けられています。申込時点で18歳以上であることに加え、融資開始時点で66歳未満、さらに最終返済時に76歳未満であることが条件です。

この他にも、労働や返済の意思を確認するための条件などが設けられています。

融資の内容・支援額

この融資制度で支援の対象となる費用には、教育訓練費用と生活費用の2種類があります。

1つ目の教育訓練費用は、入学金や授業料のほか、パソコンやタブレットなどの学用品、資格試験の受験料や旅費などが対象となります。年間の融資上限は120万円です。

2つ目の生活費用は、訓練期間中の生活を支えるための費用で、月額10万円、年間で最大120万円まで融資を受けることができます。

これらの資金は、利用者の状況によって融資可能期間が異なります。離職者や年収200万円未満の人は最長1年間、それ以外の方は最長2年間利用することが可能です。利率は年2%(信用保証料を含む)と定められており、返済は訓練を終えてから開始となります。

また、一定の条件を満たすと残高の一部が免除される仕組みもあります。

一部返済免除

この制度の最大の特徴は、キャリアアップの成果に応じて返済額の一部が免除されるインセンティブ措置がある点です。特に低〜中所得層のキャリア形成を後押しする仕組みとなっています。

返済免除の条件

免除条件は以下の通りです。

・融資対象者の年収が500万円未満であること
・指定の教育訓練を修了したこと
・訓練修了後1年以内に、雇用保険の被保険者として就職し、継続して1年以上雇用されたこと
・賃金が訓練前よりも5%以上上昇していること

以上の条件を全て満たした場合にのみ免除制度が適用されます。

返済免除額

免除割合は賃金上昇率に応じて決まります。

・賃金が5%以上上昇した場合、上限を100万円として残債の30%が免除されます。
・賃金が10%以上上昇した場合、上限を150万円として残債の50%が免除されます。

既存制度との比較

同じく雇用保険の対象外となる人の生活を支援する制度としては、「職業訓練受講給付金」や「求職者支援資金融資」があります。

職業訓練受講給付金は返済不要の給付制度です。本人収入が月8万円以下など、厳しい収入・資産要件を満たす必要がありますが、受給が認められれば月額10万円の受講手当に加え、通所・寄宿にかかる手当を受け取ることが可能です。

一方、求職者支援資金融資は、給付金を受けても生活費が不足する人向けの貸付制度です。単身の場合は月5万円、家族と同居している場合は月10万円を上限に借り入れることができ、原則として返済義務があります。

これら2つの制度は併用が可能で、受講者は無料の求職者支援訓練や公共職業訓練を通してスキルを習得し、就職を目指します。

これに対してリ・スキリング等教育訓練支援融資は、前述の2つの制度とは異なり、他制度との併用はできません。その代わり、公共職業訓練や求職者支援訓練に加えて、大学や専門学校などによるより高度で専門的な教育訓練も対象となります。

おわりに

リ・スキリング等教育訓練支援融資制度は、これまで既存制度の対象外だった人々にも学び直しのチャンスを広げる仕組みです。成果に応じた返済免除も用意されており、資金面でキャリアアップをためらっていた方にとって、有効な選択肢となり得ます。

もちろん融資である以上、返済義務が伴うことを忘れてはいけません。ですが、その一歩が将来の働き方や収入を大きく変える可能性もあります。迷ったら、まずはハローワークに相談し、新しいキャリアへの扉を開くきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

【参考資料】
厚生労働省『リ・スキリング等教育訓練支援融資
厚生労働省『教育訓練受講のための新たな融資制度について
厚生労働省『求職者支援制度のご案内

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