NISAを相続することになったら?知っておくべき2つの税金

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65歳以上向けのプラチナNISAが本格的に検討され、将来的に多くの高齢者がNISAを活用する可能性が高まっています。そのため、NISAの相続も身近な問題となるかもしれません。

「NISAは非課税だから相続税もかからないのでは?」「NISAではなく現金で残しておいた方がいい?」といった疑問を抱く方もいるかもしれません。

今回は、NISAを相続する際に知っておくべき基本的なポイントと、相続時および相続後に関わる税金の扱いについて解説します。

NISAを相続するとはどういうこと?

NISAを相続するとは、亡くなった人(被相続人)のNISA口座にある金融商品を、相続人が引き継ぐことを意味します。そのため、NISA口座の資産は現金や不動産と同じように相続財産として扱われ、相続税の課税対象となります。

また、相続が発生した時点で、被相続人のNISA口座は廃止され、非課税措置は終了します。口座で運用されていた資産は、死亡日までの運用益は非課税のままですが、それ以降の運用益は所得税の課税対象となります。

相続したNISA口座の資産は、被相続人の死亡を証券会社や銀行に連絡し、必要書類を提出した後、相続人の口座に移管されます。この際、被相続人のNISA口座から相続人のNISA口座に引き継ぐことはできず、資産は相続人名義の課税口座(特定口座または一般口座)に移されます。

相続時にかかる税金:相続税

相続税では基礎控除額が設けられているため、遺産総額から基礎控除額を差し引くことができます。基礎控除額は、”3,000万円+(600万円×法定相続人の数)”という式で算出されます。例えば、法定相続人が1人であれば3,600万円まで、3人であれば4,800万円までは非課税となります。NISAを含む遺産総額がこの基礎控除額を超えない限り、相続税は発生しません。

では、基礎控除額を超えたら相続税はどのくらいになるのか。遺産総額が5,000万円で、法定相続人が1人のケースを想定してみましょう。

基礎控除額:3,000万円 +(600万円 × 1人)= 3,600万円

課税遺産総額:5,000万円 − 3,600万円 = 1,400万円

この1,400万円に相続税の税率を適用します。課税遺産総額が1,000万円超〜3,000万円以下の場合、税率は15%、控除額は50万円です。

相続税額:1,400万円 × 15% − 50万円 = 160万円

つまり、5,000万円を相続するために支払う相続税は160万円となります。

相続後にかかる税金:所得税

株や投信で値上がり益や配当を得た場合、その利益に対して所得税がかかります。例えば、売却して値上がり益が出た際には、売却価格から取得価額と売却手数料を差し引いて利益(譲渡所得)を算出します。NISA口座の金融商品を相続した場合、この取得価額は被相続人が亡くなった日の終値が適用されます。

この取得価額が変わる影響は、相続人にとって大きな影響をもたらします。

仮に、元本600万円で取得した証券が、死亡時に1,000万円に値上がり(含み益400万円)していたとします。NISA以外の課税口座から引き継いだ場合、取得価額は600万円となり、相続後に売却すると、含み益の400万円は課税対象となります。

しかし、NISA口座から移管された場合は、取得価額が相続開始時の価格1000万円となるため、相続直後に1000万円以内で売却すると、利益は0円とみなされ課税されません。

この様に、含み益がある場合はNISA口座から相続する方が、所得税の面で有利になります。

一方、含み損はこの限りではありません。

仮に、元本600万円で取得した証券が、死亡時に400万円に値下がり(含み損200万円)していたとします。課税口座で引き継いだ場合、取得価額は600万円となり、含み損の200万円には損益通算や3年間の繰越控除が利用できます。

しかし、NISA口座から移管された場合、取得価格は400万円となり、含み損はなかったものとみなされます。そのため、他の利益と損益通算することはできません。もし、株価が回復してから売却すると、400万円を超えた部分は課税対象となります。

おわりに

NISAを相続すると、他の相続財産と同様に相続税がかかり、さらに売却時や配当を受け取った時には所得税が課されます。

とはいえ、運用で資産を増やしていればメリットは十分にあります。現金3,500万円をそのまま相続すれば税金はかかりませんが、手元に残るのは3,500万円だけです。一方、NISAで5,000万円まで増やしていた場合、相続税160万円を払っても手元には4,840万円が残ります。

税負担はあるものの、利益が出ていれば最終的に手元に残る額は増えます。NISAは、運用次第で相続を見据えた資産形成にも有効な選択肢といえるのではないでしょうか。

相続や運用の方針は、家族構成や資産状況によって異なります。思わぬトラブルや負担を避けるためにも、事前に家族と話し合っておくことが大切です。

【参考資料】
国税庁『No.4155 相続税の税率
国税庁『No.1464 譲渡した株式等の取得費
国税庁『NISA及びつみたてNISAの手続きに関するQ&A

執筆者:鍛治田祐子

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