販売期限後の食品を支援に活用:コンビニ型コミュニティフリッジの仕組みと可能性

マネー

私たちの暮らしに深く根付いているコンビニエンスストア。24時間いつでも商品を手に入れられるその利便性の一方で、日々多くの食品が廃棄されている現実があります。
こうした食品ロスの削減と、生活に困難を抱える家庭への支援を同時に実現する実証事業が、7月からスタートします。
今回は、このコンビニで売れ残った食品を活用する新たな取り組みについてご紹介します。

食料品廃棄の現状と新しい対策

長らく問題となっている食品の大量廃棄。農林水産省と環境省の推計によると、日本国内における食品ロスの量は令和4年度で年間472万トンに上ります。このうち、コンビニエンスストアを含む食品小売業から発生する食品ロスは年間49万トンに達しています。

この状況を受け、国は2019年から食品ロス削減推進法を施行し、食品ロスを削減する様々な政策を進めてきました。

コンビニ各社も、フードバンクや子ども食堂といった団体に対して商品を寄付したり、商品を値下げやポイントを上乗せして販売する取り組みも実施してきました。そして今回、新たに消費者庁主導のもと、販売期限を迎えた商品を、支援を必要とする個人へ直接無償で提供するサービスが始まります。

新事業の仕組み

このサービスは「コンビニ型コミュニティフリッジ導入実証事業」という名で進められます。コミュニティフリッジとは地域の冷蔵庫を意味し、地域住民や地元の事業者なら誰でも食品を寄付したり、必要な人が誰でも自由に食品を持ち帰ることができる仕組みです。

今回の事業は、こうしたコミュニティフリッジの考え方をコンビニ店舗に導入し、食品ロスの削減と、経済的に困窮する人々への支援の両立を目指します。

この新たな取り組みは、2025年7月からのスタートを予定しており、まずは政令指定都市のうち3都市で、それぞれ1店舗ずつ、計3店舗で試験的に導入されます。運用状況を見ながら、段階的に対象地域や店舗数を全国へと広げていく計画です。
提供されるのは、販売期限を迎えたものの、まだ消費期限を過ぎていない食品です。販売期限とは、コンビニなどが品質管理のために独自に定めた販売の目安であり、食品が安全に食べられる期限を示す消費期限よりも手前に設定されています。 このことから利用者は安全性に問題のない商品を受け取ることができます。

この支援の対象となるのは、住民税の非課税世帯や、児童扶養手当の受給世帯など、食料の確保に困難を抱える家庭です。利用者は、マイナポータルや福祉データと連携した専用のアプリに登録し、アプリを通じて商品を受け取ることができます。その際、対象者であることを正確に確認するため、マイナンバーカードが活用される見込みです。

専用アプリの具体的な流れ

この事業の要となるのが、お店と利用者をつなぐ専用アプリです。アプリの利用は以下のようなステップで行われる予定です。

①お店:コンビニの店員が、販売期限が過ぎた商品の情報を写真付きでアプリに登録
②利用者:商品が登録されると、店舗から半径350メートル以内に住む対象者のスマホに通知が届く
③利用者:通知を見た利用者は、アプリ上で提供されている商品を確認し、先着順でクーポンを取得
④利用者:店舗へ行き、レジでアプリの画面(クーポンなど)を提示して商品を受け取る

このアプリでは通知範囲や提供数に制限があることから、公平性が重要な課題となっています。今回の実証事業で課題を洗い出し、全国展開に向けてガイドラインを作成するとしています。

おわりに

今回の取り組みは、コンビニという日常に密着した場を通じて、まだ食べられる食品が無駄にならず、必要とする人の手に届く。そんな仕組みが日本各地に広がる切っ掛けになるかもしれません。

また、マイナンバーや福祉情報を活用して手軽かつ確実に支援を届けるシステムづくりが進めば、これまで支援が届きにくかった家庭にも、よりスムーズに必要な食品が行き渡るようになることが期待されます。

今回の実証事業は、社会課題にテクノロジーで応える挑戦でもあります。現場での検証を通じて課題を洗い出し、持続可能な仕組みへと育てていくことで、「食品ロスのない社会」と「支援が行き届く社会」の実現に一歩近づいていくのではないでしょうか。

【参考】
農林水産省『食品アクセスの確保に関する関係省庁の支援策 【経済的アクセス】
環境省『我が国の食品ロスの発生量の推移等

執筆者:鍛治田祐子

■ファイナンシャルプランナー

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