バブル景気に見る!過去の経済から学ぶ7つの知恵

マネー

今年に入り、〇年ぶりの円安という言葉を目にすることが多くなりましたよね。このまま147円台後半に突入すれば32年ぶりの円安水準となるそうです。

32年前何が起こったのか。今回はバブル景気を振り返りながら、今に活かせるかもしれない7つの知恵を紹介します。

■知恵1:円高が進むと日本の製品は海外で売れにくくなる

1980年代前半、アメリカは物の値段を上げるため”インフレ政策”を実施していました。その政策の影響で金利上昇が行われ”ドル高”が進行していました。ドル高になるとドルの価値が高まり、アメリカの商品が他の国の商品よりも高くなり、海外の人たちにアメリカの商品を買ってもらえなくなります。その結果、アメリカの貿易赤字は拡大しました。特に、貿易が好調だった日本との間では貿易摩擦が起こり、問題となっていました。

1985年9月、行き過ぎたドル高を改めるために先進5か国はニューヨークのプラザホテルにて会議を行います。この会議でドルの価値を下げることを決めました。これを”プラザ合意”と呼びます。

プラザ合意後、目的通り円高ドル安は進みましたが、あまりにも効果的に作用し、1ドル240円ほどだった為替レートが翌年には1ドル150円台にまでなりました。すると今度は、日本の商品が高くなり、海外の人たちに日本の商品を買ってもらえなくなりました。これにより日本の輸出産業はダメージを受けることになります。

■知恵2:景気が悪くなると金利は引き下げられる

急激な円高の影響で、海外市場での日本製品は割高になり売れなくなっていきます。輸出で潤っていた日本には大きな痛手となり、円高不況に突入していきます。

日銀はそんな円高不況を打開するため、”公定歩合”を引き下げる低金利政策を行いました。プラザ合意前の5%から段階的に引き下げられ、1987年2月には当時の戦後最低である2.5%まで引き下げられました。

公定歩合とは、日銀が市中銀行(私たちが利用する普通の銀行)にお金を貸し付ける際に適用される金利のことです(現在は、市中銀行同士でお金の貸し借りができるため公定歩合はほとんど使われていません)。

■知恵3:金利が下がるとお金を借りやすくなる

公定歩合が引き下げられると低い金利でお金を借りることができます。そのため当時、たくさんの企業が事業拡大のために大きな融資を受けて土地を買うようになりました。土地の買い手が増えると土地の値段も自然と上がります。

いつしか「日本の土地は狭いから土地を持っていれば、工場なんて建設しなくても、土地の価格が上がったタイミングで売れば儲けられるね」と土地に対して投機的な考えが広まり、土地を担保にお金を借りて新たに土地を購入する企業も少なくありませんでした。

そのような投機的な考えは一般企業だけではありませんでした。融資をする側の銀行も同じように考えていたのです。そのため、銀行も必要以上の資金を融資するようになり「3,000万円の土地に対して、5,000万円貸しますよ」という、今では信じられない事が起こっていました。

いわゆる”不動産バブル”です。
みんながみんな「不動産の価格は上がり続ける!」という土地神話を信じていたのです。

■知恵4:ドルの大幅な変動は日本の市場にも波及効果をもたらす

不動産バブルにより、株式も大きく跳ね上がり日本は好景気に沸いていました。急激に上がる土地価格や株式を落ち着かせるため、日銀は公定歩合の引き上げを検討します。

しかし、引き上げようとしたタイミングでアメリカの株価が歴史的な大暴落に見舞われます。1987年10月19日、月曜日に起こったことで”ブラックマンデー”と呼ばれた暴落は、ダウ平均株価を1日で508ドル(下落率22.6%)下げました。これは世界中に波及し、日本でも日経平均株価は3,836円(下落率14.9%)下がり、21,910円まで暴落しました。

「もしも今、日本が公定歩合を引き上げてしまったら、日本円の高い金利を狙って日本へ資金が流れ込み、アメリカの株式市場がさらに下落するかもしれない」と、日本は公定歩合の引き上げを見送りました。

■知恵5:急激に金融を引き締めると反動が大きい

ブラックマンデーによる打撃から回復の兆しを見せている頃、日銀はついに公定歩合の引き上げを決定しました。1989年5月に2.5%から3.25%、そこから段階的に上げて行き1990年8月には6%まで引き上げました。

さらに1990年3月には、大蔵省(現在の金融庁と財務省)が各金融機関に”不動産融資の総量規制”を通達し、土地価格の適正化を図りました。つまり融資の限度額を決め、必要以上の貸し付けをなくすことで不動産融資をより抑え込むことにしたのです。

これにより、融資を受けられなくなった人は土地を買うことできなくなり、不動産融資が一気に減っていきます。

■知恵6:政策の結果が反映までに時間差が生じることがある

不動産融資の総量規制というお達しにより、金融機関は土地購入のための融資を貸し渋り、その結果、「お金を借りれないなら土地はいらない」という人が増え、土地の需要が下がっていきます。都市部から地方へ、1年から数年のタイムラグのあと土地価格の暴落が起こり、土地神話が崩壊していきます。

■知恵7:金融機関が正しくリスクを見極められるとは限らない

バブルの崩壊が始まると、土地を担保にお金を貸していた金融機関はお金を回収できなくなりました。貸したお金を回収できなくなることを”不良債権”といいます。

たくさんの国民や企業が土地を担保にお金を借りて、そのお金で新たに土地を買う投機的手法を実践していました。不動産融資を拡大していた銀行は、その分、不良債権が膨れ上がることになります。

そうして不良債権を抱えきれなくなった結果、1997年11月三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券、德陽シティ銀行が破綻します。

■おわりに

いかがでしたか? バブルは一定の周期で起こると言われています。過去から学び、理解を深めることで、同じ様な出来事が起こっても冷静な目で見ることができるかもしれません。また日々の投資に役立てたり、未来への備えとしても役立つ可能性もあります。是非、過去の出来事を振り返り教訓を活かしてみてください。

【協力】
※柳川FP綜合事務所 柳川 郁弥・・・「たのしい!おもしろい!わかりやすい!」がモットーのファイナンシャルプランナー。人生に役立つ「お金の情報」を伝える講師としても活動中

執筆者:鍛治田祐子

■ファイナンシャルプランナー

【保有資格】CFP®認定者 1級ファイナンシャルプランニング技能士

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