かつて”節税保険”として知られていた長期平準定期保険は、企業が税金を減らすために利用されていました。特に、解約返戻率が高い時期に解約することで、支払った保険料の大部分を取り戻すことができるため、多くの企業がこの保険に加入していました。
しかし、2019年の税制改正により、その経理処理が大きく変わりました。この改正の目的は、企業が保険を利用して過度に税金を減らすことを防ぐことです。
今回は、具体的な仕訳方法や活用方法について紹介します。
■ピーク時の最高解約返戻率の区分
長期平準定期保険の最高解約返戻率には、次の区分があります。
- 50%以下
- 50%超~70%以下
- 70%超~85%以下
- 85%超
これらの区分ごとに経理処理が異なります。
最高解約返戻率50%以下
最高解約返戻率が50%以下の場合、支払った保険料の全額が経費として認められます。例えば、年間保険料が390,000円の場合、下図のように仕訳します。
最高解約返戻率50%超-70%以下
最高解約返戻率が50%超~70%以下の場合、期間ごとに仕訳が異なります。
- 保険期間の当初40%の期間:支払保険料の40%を資産計上し、60%を経費として計上します。
- 40%の期間を超え75%までの期間:保険料を全額損金算入します。
- 残りの25%の期間:保険料の全額を損金算入しつつ、積み立てた資産計上分を均等に取り崩して損金算入します。
例えば、2022年7月に40年間の保険契約に加入し、年間保険料が3,500,000円の場合、下図のように仕訳をします。
最高解約返戻率70%超-85%以下
最高解約返戻率が50%超~70%以下の場合、期間ごとに仕訳が異なります。
- 保険期間の当初40%の期間:支払保険料の60%を資産計上し、40%を経費として計上します。
- 40%の期間を超え75%までの期間:保険料を全額損金算入します。
- 残りの25%の期間:保険料の全額を損金算入しつつ、積み立てた資産計上分を均等に取り崩して損金算入します。
例えば、2022年7月に40年間の保険契約に加入し、年間保険料が3,000,000円の場合、下図のように仕訳をします。
最高解約返戻率85%超
最高解約返戻率が85%を超える場合、支払った保険料の大部分を資産として計上し、少部分を経費として計上します。
- 加入から10年間:支払保険料×最高解約返戻率×0.9 を資産計上し、残りを経費として計上します。
- 当初10年間を超え解約返戻率がピークになるまでの期間:支払保険料×最高解約返戻率×0.7 を資産計上し、残りを経費として計上します。
- 解約返戻率がピークを迎えてから保険期間満了まで:保険料の全額を損金算入しつつ、積み立てた資産計上分を均等に取り崩して損金算入します。
例えば、2022年7月に40年間の保険契約に加入し、年間保険料が1,200,000円の場合、下図のように仕訳をします。
長期平準定期保険の活用術
改正により節税のメリットは大幅に減少しましたが、それでもなお長期平準定期保険は、事業承継や相続対策、役員退職金の準備資金などに役立てることが可能です。
たとえば、長期間にわたって一定の保険料を支払う特性を活かし、計画的に資金を積み立て、経営者の死亡時には保険金を受け取り、そのお金を事業の継続資金や相続税の支払いなどに充てることで、事業の安定性を保つことができます。
また、役員が退職する10年以上前から保険に加入しておけば、退職時に解約返戻金を受け取り、退職金の支払いに充てることで、企業のキャッシュフローを安定させることができます。
他の保険では、保険期間が短かったり、解約返戻金が少ないため、長期的な資金計画には向いていません。どちらの方法も、長期平準定期保険ならではの活用方法です。
おわりに
いかがでしたか? 長期平準定期保険は、改正後も適切な経理処理を行うことで企業にとって有用なツールとして活用できます。今後も税制改正に注目し、最新の情報を把握することが大切です。質問や疑問があれば、ぜひ専門家に相談してみてください。
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