今回は年金(老齢年金)についてお話します。特に、年金に対してネガティブなイメージを持っている人に見てほしいと思っております。
私は、20代・30代といった若い世代ほど年金に対してネガティブで否定的なイメージを持っている印象を受けているのですが、その中でも「どーせ、私たちの老後には年金ってもらえないんでしょ? 破綻してるかもしれないんでしょ!?」といったセリフを聞く機会は特に多いと感じています。
彼らのセリフをもう少し噛み砕いてみると、おそらく次のようなことを言いたいのではないでしょうか。
- 年金財政って赤字なんでしょ!?
- 年金保険料の未納者ってたくさんいるんでしょ!?
他にも言いたいことは山ほどあるかもしれませんが、今回はこの2点に焦点をあてて話を進めたいと思います。
1.年金財政って赤字なんでしょ!?
これは、単純な勘違い……だと思います。
厚生労働省の資料(※1 18スライド目 P.13「13.平成30年度の単年度収支状況」)によると年金財政は黒字です。
平成30年度の収支で見ると、確かに、収入=52兆7,796億円・支出=52兆9,727億円で若干支出の方が多く、赤字に見えなくもないですが平成29年度までの積立金+平成30年度の収支やら運用損益やらで約200兆円ぐらいの黒字です(時価ベース)。家計にたとえるなら、「平成30年度の収入は527万7,960円、支出は529万7,270円で少しオーバーしちゃったけど、約2,000万円の貯蓄があるし、そこから補てんします」と言えちゃうぐらい余裕があるってことです。
ちなみに平成29年度は収支で見ても、3,113億円の黒字です。
これほどにまで余裕がある状態なのに、なぜ彼らは「赤字だ!」と大騒ぎするのでしょうか? その答えは、おそらく国の一般会計(※2 出所:財務省)だと思います。「国の一般会計の赤字」を「年金財政の赤字」だと勘違いしてしまったのでしょう。
2.年金保険料の未納者ってたくさんいるんでしょ!?
実際に計算してみれば分かりますが、年金保険料の未納者がべらぼうにいてるワケではありません。ごくわずかの人たちが未納なだけです。
……と言うだけでは納得できないでしょうから、一緒に計算してみましょう。
厚生労働省の資料(※3 2スライド目 「表1 国民年金被保険者数の動向」)によると、平成30年度の公的年金被保険者数は次のように記されています。
- 第1号被保険者(自営業者等):1,471万人
- 第2号被保険者(会社員等):4,428万人(暫定値)
- 第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者):847万人
つまり、公的年金被保険者数合計は6,733万人といえます。
その上で、第2号被保険者は会社から勝手に徴収されるので未納になっている人がいるとは考えにくく、第3号被保険者は現在そもそも納付する必要がありませんので未納とは言えないでしょう。注目すべきは第1号被保険者です。同資料(2スライド目 「図1 公的年金加入者数の推移」)を確認すると、次のように記されています。
- 納付者:759万人
- 免除・猶予者:574万人
- 未納者:138万人
ということは、実際の未納者の割合は「第1号被保険者の未納者138万人 ÷ 公的年金被保険者数合計6,733万人 × 100 ≒ 2.05%」になります。
そんなにたくさんの人が未納している感じはしませんよね? 降水確率2%って言われても傘持って行かないでしょ?
おわりに
今回は年金についてお話しましたが、いかがでしたでしょうか?
貴方が受け取れる年金額がいくらになるかは分かりませんが、少なくとも「日本の年金システムが崩壊するような事態に陥っているワケではない」というのがご理解いただけたら幸いです。現在20代・30代の人は、きちんと年金保険料を納めてさえいれば、将来きっと年金を受け取ることができるでしょう。
【参考資料】
※1 厚生労働省『公的年金財政状況報告-平成30年度-の概要』 - 社会保障審議会年金数理部会
※2 財務省『国及び地方の長期債務残高』
※3 厚生労働省『平成 30 年度の国民年金の加入・保険料納付状況』 - 厚生労働省年金局
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