前回の記事で、投資信託をドルコスト平均法を用いて積み立てる際の注意点を語りましたが、今回はそれに関連するリスクとリターンについてお話したいと思います。
もし、この記事をご覧いただいている皆さんが投資に興味を持っているのであれば、おそらく一度は次のようなシミュレーションサイトを参考にしたことがあることでしょう。
金融庁 資産運用シミュレーション:https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/index.html
シミュレーションサイトにご用心
アクセスしてみると、次のような画面になります。
次のような条件でシミュレーションしてみました。
- 毎月の積立金額:1万円
- 想定利回り(年率):7.53%
- 積立期間:10年
で計算をしてみると、「120万円突っ込んで178.2万円になるから、儲けは58.2万円になります」と言ってるワケです。
さて、これは本当なのでしょうか?
……本当だったら、わざわざ記事にしません(笑)
「じゃあ、金融庁が嘘をついていると言うのか!?」 ……まぁ、嘘とは言い切れないかもしれませんが、投資初心者がこの結果を鵜呑みにしてしまうことを考えると非常に不適切な表現だと思います。
なぜなら、実際に投資を行い、こんな結果になる確率は極めて少ないからです。だって、複利でのリターンしか考慮されてないんですから。
投資にはリスクが付き物です。にも関わらず、金融庁のシミュレーションサイトではそのリスクが一切考慮されていません。これは「銀行口座にお金を預け入れて、複利7.53%で利息を受け取れる」と言ってるようなものです。つまり、リスク0%・リターン7.53%の商品ということです。そんな商品、私は聞いたことがありません。もしご存じでしたら是非ご一報ください。
実際のリスクは?
……勘のいい人なら少し疑問に思ったのではないでしょうか。「何故このような記事で想定利回り7.53%なんていう中途半端な数字を用いたんだろう?もっと分かりやすく、3%とか5%とか10%とかにすればいいのに……」
実は、過去10年間(2010年5月~2020年4月)の日経平均株価の利回りに合わせたんです。リスク0%なんていう机上の空論ではなく、リアルはどうなのか。7.53%のリターンの場合、リスクは何%になるのか。気になるでしょう? ということで、過去10年間の日経平均株価のリスクを計算してみました。
結果は17.27%でした。
この、リターン7.53%・リスク17.27%という値を用いて、正規分布で計算してみると次のようになります。
- 68%の確率で、 7.53±17.27% = 24.80% ~ -9.73% のリターンになり、
- 95%の確率で、 7.53±(17.27×2)% = 42.06% ~ -27.00% のリターンになり、
- 99.7%の確率で、 7.53±(17.27×3)% = 53.33% ~ -44.27% のリターンになります。
つまり、シミュレーションのように120万円突っ込んだら・・・
- 68%の確率で、 1,497,579円 ~ 1,083,190円 のリターンになり、
- 95%の確率で、 1,704,774円 ~ 875,995円 のリターンになり、
- 99.7%の確率で、 1,911,969円 ~ 688,800円 のリターンになるということです。
シミュレーションにあったように、178.2万円ものリターンは、68%でも95%でもなく、99.7%の範囲に該当します。つまり、上位0.3%~5%以内の範囲です。しかも、この範囲に入ろうと思ったのであれば、120万円の元本が688,800円ぐらいにまで減ってしまうことを覚悟しなければならない、ということです。
おわりに
この68%、95%、99.7%といった正規分布も「結局は理論上だろ?」と言われてしまえば”それまで”なのですが、リアルであっても概ね、この理論上の正規分布に沿ったリターンになるかと思います。是非、参考にしていただき、今後のシミュレーションにお役立てください。
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