どっちがお得? 現金値引き vs ポイント還元

マネー

日頃、お買い物でよく目にする現金値引きとポイント還元。10%現金値引きと10%ポイント還元なら、どちらも同じだけお得だと思っていませんか。実は明確にどちらがお得か決まっています。

今回は、結局どちらがお得なのか、そして何故同じだけお得だと思い込んでしまうのかを行動経済学の観点から解説します。

■結論:現金値引きの方がお得!

結論からいうと、現金値引きの方がお得です。なぜなら、現金値引きはその場で直接割引が適用されるため、確実に手元のお金を減らさずに済むからです。一方で、ポイント還元には後から使うという制約や条件がつきます。

例えば、”10%を現金値引きするA店” と “10%をポイント還元するB店” で、それぞれ1,000円分の買い物をした場合を考えてみましょう。

現金値引きのA店の場合

A店では、1,000円の商品を購入すると10%の現金値引きが適用され、レジで支払う金額は 900円 になります。

これを計算式にすると次のようになります。
値引き額100円 ÷ 商品代1,000円 = 10%

つまり、「10%現金値引き」と謳っているお店では確実に10%お得になります。

ポイント還元のB店の場合

B店では、1,000円の商品を購入すると、10%分のポイント(100円相当)が還元されます。ただし、このポイントは次回以降の買い物にしか使えず、もう一度100円相当の買い物をする必要があります。そのため、B店では1,100円購入してやっと100円相当のポイントを利用できるのです。

これを計算式にすると次のようになります。
100円相当のポイント ÷ (1回目の商品代1,000円+2回目の商品代100円) = 約9.1%

つまり、「10%ポイント還元」と謳っていても、実際の割引率は約9.1%にしかなりません。

■なぜ同じだけお得だと思い込んでしまうのか

現金値引きもポイント還元も同じだけお得だと思い込んでしまうのには、主に3つの理由があります。

まずは、自分の思い込みを把握するために少しテストをしてみましょう。問1は問題を読んでから5秒以内に答えてください。


【問1】
チョコレートとガムを買ったら合計220円でした。チョコレートの値段はガムより200円高いです。ガムの値段はいくらでしょうか?


【問2】
100円のくじを1枚購入しました。抽選日を待っていると、販売終了後に他人がその1枚を譲って欲しいと言ってきました。人間関係などは考慮せず、単純にいくらなら売ってもいいですか?


【問3】
1,500円する展覧会の前売り券を購入しました。しかし、当日美術館に行くとその前売り券を紛失していたことに気づきます。展覧会を観るには、もう一度1,500円の当日券を買わなければなりません。この場合、あなたは当日券を買い直しますか?

【問4】
1,500円する展覧会を観るために、当日券を買いに美術館へ行きました。しかしチケット売り場で財布を開くと、来る途中で1,500円を落としてしまったことに気づきます。財布にはまだお金が残っており、当日券(1,500円)は買うことができます。この場合、あなたは当日券を買って展覧会を観ますか?

思い込み1:直感

私たちの脳は、複雑な問題に直面すると、深く考えずにすばやく結論を出そうとする性質があります。

あなたの【問1】の答えはいくらになりましたか?

まず、【問1】を振り返ってみましょう。
「チョコレートとガムを買ったら合計220円でした。チョコレートの値段はガムより200円高いです。ガムの値段はいくらでしょうか?」

この問いに対して「20円」と答えた人は、まさに直感に従って答えていることになります。冷静に計算すると、ガムが20円ならばチョコレートは220円になり合計すると240円になると気付くはずです。しかし、情報を素早く処理しようとするあまり、計算を省略して直感的に判断すると、誤った答えを導いてしまうのです。

これを行動経済学では”ヒューリスティック”または”システム1”と呼びます。

“10%現金値引き” と “10%ポイント還元” どちらがお得かという問いにも、この心理が働いてしまうことで、直感的に同等の割引率だと感じてしまうのです。

思い込み2:もったいない症候群

人間は一度手に入れたものに対して、実際の価値以上に高く評価し、手放したくないと感じる心理があります。

【問2】では、くじにいくらの値段をつけましたか?

【問2】を振り返ってみましょう。
「100円のくじを1枚購入しました。抽選日を待っていると、販売終了後に他人がその1枚を譲って欲しいと言ってきました。人間関係などは考慮せず、単純にいくらなら売ってもいいですか?」

ここで購入価格の100円を超える金額を付けた場合、既に自分が所有しているという事実から「自分にとって手放しがたい物」と思い込んでいる可能性があります。

このような心理状態を行動心理学では ”保有効果” と呼びます。

ポイント還元で言えば、付与されたポイントをもったいないと感じてしまいますのが保有効果です。
もしあなたがくじに100円以上の価値を付与したのであれば、ポイントを利用せずにそのまま貯め込んだ挙句、期限切れになったことがあるのではないでしょうか。

思い込み3:別勘定

私たちはお金を使う際、その入手方法によって、無意識にお金を仕分けしてしまう心理を持っています。

あなたは【問3】と【問4】ではどの様に判断しましたか?

【問3】と【問4】を振り返ってみましょう。
【問3】「1,500円する展覧会の前売り券を購入しました。しかし、当日美術館に行くとその前売り券を紛失していたことに気づきます。展覧会を観るには、もう一度1,500円の当日券を買わなければなりません。この場合、あなたは当日券を買い直しますか?」
【問4】「1,500円する展覧会を観るために、当日券を買いに美術館へ行きました。しかしチケット売り場で財布を開くと、来る途中で1,500円を落としてしまったことに気づきます。財布にはまだお金が残っており、当日券(1,500円)は買うことができます。この場合、あなたは当日券を買って展覧会を観ますか?」

どちらも「1,500円を失った上でさらに1,500円が必要」という状況です。しかし、【問3】で「3,000円支払うのは高いな」と思ったり、【問4】で「現金を落としたのは展覧会とは無関係だから」と思ったり、それぞれ異なる判断を下していれば、お金を無意識に仕分けていることになります。

このような心理傾向を行動心理学では ”メンタルアカウンティング” と呼びます。

このお金を仕分ける心理は、付与されたポイントを利用する際にも働くことがあります。実際にはお金を支払ってポイントを得たにも関わらず、ボーナスやおまけのように感じてしまい、現金よりも軽い存在に分類してしまうのです。その結果、現金では躊躇する買い物でも、貯まりまくったポイントがあれば「さぁ!何を買おうかな」などと購買意欲があがってしまうのです。

■おわりに

いかがでしたか? 今回解説した3つの心理的行動を意識してみると、お得なのはどちらか冷静に判断できるかもしれません。日々のお買い物でもこうした心理に気を付けて、賢くお金を使っていきましょう。

執筆者:鍛治田祐子

■ファイナンシャルプランナー

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