マイナ保険証とマイナ免許証の本格導入が始まりましたが、皆さんは既に利用している、もしくは利用を検討していますか?
「便利そう」と感じる一方、中には「本当に大丈夫なの?」と不安に感じ、利用を躊躇している方もいるのではないでしょうか。
手続きの簡略化などで利便性はグッと高まりますが、見逃せないデメリットも確かに存在します。
今回は、マイナ保険証とマイナ免許証の知っておきたいメリットと、注意すべきデメリットについてご紹介します。
マイナ保険証の概要
マイナ保険証とは、マイナンバーカードに健康保険証の機能を紐付けたものです。医療機関や薬局でマイナンバーカードを提示するだけで、保険証として利用できる仕組みになっています。現行の健康保険証の新規発行は廃止され、2025年12月以降はマイナ保険証または資格確認書での受診が基本となります。
マイナ保険証のメリット
より適切な医療を受けることができる
マイナ保険証を利用し、情報提供に同意すれば、過去に処方された薬や健康診断の結果などを、医療機関や薬局と共有できる仕組みです。これにより、医師や薬剤師は正確なデータを基に、診断や薬の処方が可能となります。
窓口負担が自動的に上限額までに抑えられる
これまで事前申請が必要だった限度額適用認定証がなくても、高額療養費制度が自動的に適用されるため、窓口での支払いが上限額までに抑えられます。
医療費控除の申請が簡単にできる
確定申告で医療費控除を申請する際、マイナポータルとe-Taxを連携すれば、医療費情報を一括で取得し、データを自動入力することができます。
マイナ保険証のデメリット
有効期限がある
窓口でマイナ保険証を利用するには、マイナンバーカードに搭載された電子証明書の認証が必要です。電子証明書には有効期限があり、マイナンバーカード本体の有効期限とは異なるため、うっかり失効しないよう注意が必要です。更新を忘れると、マイナ保険証として利用できなくなります。
システムへの依存によるトラブルの可能性
マイナ保険証を利用するには、医療機関側が専用のシステムを導入している必要があります。導入されていない医療機関では使えず、システムに不具合が発生した場合にはスムーズな受付ができないこともあります。
カードの紛失・破損のリスク
マイナンバーカードを紛失・破損してしまうと、マイナ保険証としても利用できなくなります。1枚のカードを失うだけで、マイナンバーカードと健康保険証の両方を同時に失うことになり、紛失・破損時の影響が大きくなります。また、再発行には一定の手続きが必要で、発行までに時間がかかることもあるため、急な通院等に不便を感じるケースもあります。
マイナ保険証を使いたい場合の手続き等
マイナ保険証を利用するには、まずマイナンバーカードを取得し、その上で健康保険証としての利用登録を行う必要があります。登録後は、病院や薬局の窓口でマイナンバーカードを提示すると、マイナ保険証として利用することができます。
以下のフローチャートで手続きの流れを確認してみましょう。

マイナンバーカードの取得方法
マイナンバーカードの申請には申請時来庁方式と交付時来庁方式の2種類があります。
申請時来庁方式は、市役所など自治体の窓口で予め本人確認を含めた手続きを行い、自宅でマイナンバーカードを受け取る方法です。
交付時来庁方式は、スマホやパソコンからのオンライン申請、郵送による申請、証明写真機での申請のいずれかを行った後、自治体の窓口で受け取る方法です。一部の郵便局では写真撮影や申請書記入のサポートも実施しています。
マイナ保険証の登録方法
マイナンバーカードを取得したら、次は健康保険証としても使えるように利用登録する必要があります。
登録は、マイナポータルからのオンライン登録、セブン銀行ATMを利用した登録、医療機関や薬局窓口の顔認証付きカードリーダで登録する方法があります。
登録が完了すれば、病院や薬局でマイナンバーカードを提示するだけで、保険証として利用できるようになります。
マイナ保険証を使いたくない場合の手続き等
マイナ保険証の利用に不安がある、使いたくないという場合は、現行の健康保険証を一定期間利用したり、資格確認書と呼ばれる証明書を使って保険診療を受けることができます。
以下のフローチャートに沿って、状況に応じた対応方法を確認しましょう。

利用登録の解除方法
昨年の10月からマイナ保険証の利用登録が解除できるようになりました。解除申請は保険者に行う必要があり、国民健康保険の場合は自治体の窓口に、それ以外はそれぞれの健康保険に申請します。解除を行うと、マイナ保険証としての機能は無効になり、現行の保険証や資格確認書で対応することになります。
資格確認証の発行
従来の健康保険証は、2024年12月2日をもって新規発行が終了しました。マイナ保険証を利用しない場合は、代わりに保険者が発行する資格確認書を使って、被保険者であることを証明することになります。
現行の健康保険証は、新規発行終了後も最長で1年間(2025年12月1日まで)は利用できますが、それ以降は資格確認書の提示が必要です。
資格確認書と資格情報のお知らせの違い
マイナ保険証の利用者には資格情報のお知らせという書類が交付されています。この書類には被保険者の資格情報が記載されており、マイナ保険証が利用できない環境で受診する際などに活用します。
資格確認書との違いは以下の通りです。

交付時期について
資格確認書は、現在の健康保険証の新規発行が終了した2024年12月2日以降、マイナ保険証を利用していない人を対象に、特別な申請を行わなくても順次交付されます。
一方、資格情報のお知らせは、すでにマイナ保険証を登録・利用している人に対して既に交付されています。
マイナ免許証の概要
マイナ免許証とは、マイナンバーカードに運転免許証の機能を紐づけたものです。カードの券面に免許情報の記載はなく、マイナポータルやアプリで確認する仕組みになります。24時間利用可能なオンライン講習の導入や、登録している住所以外での更新も即日完了するなど利便性が向上します。
マイナ免許証の更新料比較
マイナ免許証の更新料は、現行の運転免許証よりも安く設定されており、優良運転者や一般講習対象者の場合は、オンライン受講が可能になります。さらに、住所変更の手続きも自治体だけで完結するため、警察署での手続きは必要ありません。

マイナ保険証とマイナ免許証の特大デメリット
【デメリット1】有効期限の管理がとても大変
マイナ保険証・マイナ免許証を利用している人は、以下4つの異なる有効期限を把握・管理する必要があります。
- マイナンバーカードの有効期限(通常10年、未成年は5年)
- マイナンバーカードの電子証明書の有効期限(5年)
- マイナ保険証の有効期限(マイナ保険証に登録している場合)
- マイナ免許証としての免許情報の有効期限(マイナ免許証に一体化している場合)
特に注意が必要なのは3と4で、これらはマイナンバーカードの表面に記載がありません。例えば、マイナンバーカードを更新すると、免許情報はリセットされるため再度”一体化の手続き”が必要です。この手続きをする前に車を運転してしまうと、”免許不携帯”と見なされます。なお、この問題は2025年秋に解消予定となっています。
【デメリット2】マイナンバーカード紛失時の再発行手続きがとても大変
マイナンバーカードを紛失した場合、再発行の際には初回と同様、本人確認書類の提出が必要です。 多くの自治体では、”顔写真付きの書類1点”または”顔写真なし(氏名+生年月日 or 氏名+住所)の書類2点”といった条件が設けられています。
ここで問題になるのが、マイナンバーカードに健康保険証と運転免許証を一体化して使っているケースです。マイナンバーカードを紛失することで、1度に3枚の本人確認書類を失うことになり、再発行に使える本人確認書類が手元にない、という状況に陥りやすくなります。例えば、パスポートを持っておらず、社員証なども使えないという人は、本人確認書類を揃えるだけでも大変です。

なお、本人確認に必要な書類の詳細は自治体によって異なるため、困った時はまず、自治体の窓口に相談してみてください。
おわりに
マイナンバーカードに保険証や運転免許証の機能を一体化することで、利便性が高まる一方で、管理の煩雑さや紛失時のリスクなど、見逃せないデメリットも存在します。これから利用を検討する方も、すでに使っている方も、それぞれのメリットとデメリットをしっかり理解し、自分にとって最適な使い方を選ぶようにしましょう。
【参考資料】
厚生労働省『マイナンバーカードの健康保険証利用について』
デジタル庁『資格確認書(マイナ保険証以外の受診方法)』
デジタル庁『マイナンバーカードの運転免許証利用』
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