2025年欧州が日本に与える影響

マネー

前回は『2025年経済カレンダーとアメリカが日本に与える影響』と題してアメリカが日本に与える影響について述べましたが、今回は欧州が日本に与える影響について考えてみたいと思います。

欧州危機が囁かれる2025年

2024年を振り返ると、実質GDPがECB(欧州中央銀行)は6月に約5年ぶりに利下げ、BOE(イングランド銀行/イギリス中央銀行)も8月に約4年半ぶりに利下げしました。金融引き締めが緩和されたことで緩やかな回復基調を見せましたが、国により経済状況はかなり異なるため、楽観的な見方は禁物です。

例えば政治面では、ドイツでショルツ首相の信任投票で不信任という結果(2025年2月に総選挙)になったり、フランスでは首相がコロコロ変わり年内だけで4人目の首相が誕生しました。財政面では、ドイツは自動車株が低迷し実質GDPも連続マイナスになったり、フランスはムーディーズによる格下げが行われました。

今回は、東欧に位置するウクライナの支援とドイツのEU離脱といった今後可能性があるリスクシナリオを2つお話していきます。

日本の防衛費増額の可能性

米大統領トランプ氏は2024年12月に放送されたNBCテレビのインタビューで、ロシアによるウクライナ侵攻について、ウクライナへの支援を縮小/停止する可能性があることや早期終戦を望んでいることを示しました。アメリカが支援を縮小または停止した場合、欧州各国がウクライナの面倒を見なければなりません。しかし、現状は政治的にも財政的にも厳しい状況にあります。

これだけであれば欧州だけの問題と思えなくもないですが、トランプ氏がウクライナへの支援を縮小/停止する理由次第では、日本にも影響を及ぼすかもしれません。世界平和を願って早期終戦を言ったのであれば問題はないでしょう。しかし、前回の記事でも紹介した通り、トランプ氏はAmerica firstを掲げています。もし、「ウクライナに対しお金を出すぐらいなら、自国のためにお金を使いたい」という考えがあっての発言だった場合、日本に対しても「たとえ日米同盟があったとしても、アメリカにとって利益がない場合は日本を守らない」という考えに及ぶかもしれません。そうなれば日本政府は日本を守るために、さらなる防衛費増額を検討するかもしれません。

ドイツのEU離脱

ドイツのAfDという政党の共同代表であるワイデル氏が、2024年12月のインタビューで「EUがドイツの自動車産業を破壊した」と非難しました。ワイデル氏は、EUが2035年からガソリンやディーゼルで動く車の新車販売を禁止する決定をしたことを受けて「ドイツの自動車産業に悪影響を与えている」と主張しました。2025年2月の議会選挙で、AfDはドイツのEU離脱を訴える方針を示しており、イーロン・マスク氏をはじめとする多くの有権者が支持しています。もし、ドイツがEUを離脱した場合、貿易ルールや関税が変更され日本企業の輸出入に影響を受ける可能性があります。

ドイツの政治に関する補足

日本やアメリカの政治についてはニュース等で見聞きしますが、ドイツの政治は日常的に見聞きする機会が少ないと思いますので支持率の高い3党の概要を補足しておきます。

前述のショルツ氏の政党はSPDです。2021年10月には約28%の支持を得ていたSPDですが、再生可能エネルギーの推進、移民の受け入れ、インフレによる国民の購買力低下などを引き起こし2024年1月にはAfDに追い抜かれてしまいました。

なお、BSWという政党もEUの運営とNATOの拡大に否定的な立場を取っていますが、明確に反対しているのはAfDのみです。その他の政党は、EUやNATOは素晴らしいと評価しており「経済はEU、国防はNATOに任せておけばいい」と考えています。AfDは両方に反対しており、EUからは離脱し、NATOには依存しないことを望んでいます。

おわりに

いかがでしたか? 欧州からの影響と聞いてもピンとこないかもしれませんが、2025年はアメリカだけでなく、欧州の政治的選択が日本に大きな影響を与える可能性があります。今後も欧州の動きを注視し、その変化がどのように波及するかを見極めていくことが重要です。

ここに記載している内容は筆者自身のオピニオンが含まれており、掲載情報等に起因する損害等が発生しても責任を負いません。

【参考】
DAWUM『Neueste Wahlumfragen im Wahltrend zur Bundestagswahl

執筆者:鍛治田祐子

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