iDeCo改正に伴うメリットとデメリット

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税制改正大綱が発表され、その中に記載されていたiDeCoの改正が話題です。

今回の税制改正により掛金の上限額が引き上げられ、減税効果を高めることができる一方、受け取り時の納税額が上がる可能性があり、改悪との声が上がっています。

本記事ではiDeCoの仕組みと、改正によって見直された内容、それによるメリットとデメリットをご紹介します。

iDeCoの仕組みや特徴

iDeCoとは、毎月掛金を支払って、その掛金で資産運用し、運用した成果に応じて老後資金を形成できる年金制度です。

主な特徴は下記の3点です。

  • 毎月の掛金が全額所得控除となるため、所得税や住民税の減税に繋がります。
  • 資産運用で分配金などの利益があった場合は非課税です。
  • 将来、分割で受け取る場合は年金扱いとされるため公的年金等控除、一時金で受け取る場合は退職金扱いとされるため退職所得控除の対象となり多少お得になります。

そして注意すべき点として下記3点が挙げられます。

  • iDeCoへの加入は20歳から64歳まで可能ですが、運用したお金を受け取れるのは60歳以降(75歳まで)になるため、特に若い世代の方は受け取れるようになるまでかなりの年数を要します。
  • 金融機関により金額は異なりますが手数料が発生します。加入時や受取時のほか、積立期間中は最低でも毎月171円の手数料が必要です。
  • 働き方によって掛金の上限額が異なります。

改正に伴うメリット

働き方によって掛金の上限額が異なるのはそのままですが、与党が掛金の上限額を引き上げる方向で調整に入りました。

DBや企業型DCに加入していない会社員(税率30%)の場合を例に、この調整が実現されれば、どれだけのメリットがあるのか試算してみましょう。

  • 現行:月2万3000円×12ヶ月×税率30%=8万2800円の減税効果
  • 改正後:月6万2000円×12ヶ月×税率30%=22万3200円の減税効果

上記のように約2.7倍の減税効果が見込めます。

改正に伴うデメリット

現行制度ではiDeCoを一括で受け取り、そこから5年以上空けて退職金を受け取ると、それぞれに退職所得控除が適用できます。これを”5年ルール”といいます。

しかし、今回の改正により、この5年という期間は10年に見直されることになりました。この変更で、iDeCoを一括で受け取ってから10年未満で退職金を受け取った場合、就労期間とiDeCoの加入期間が重複する部分は控除の対象外となります。

改正前と後ではどれほど納税額に差がでるのか、3つのケースと共に改正後の金額も比較してみましょう。なお、iDeCoは600万円を一括で受け取るものとします。

Cさんの場合、今まで5年空ければ非課税だったものが、改正後は重複期間として5年分の控除が適用されず、税負担が発生することになります。

控除の適用年数について、より詳しく見てみましょう。

退職所得控除は5年ルール(10年ルール)の他に、退職金を先に受け取ると、後から受け取るiDeCoは重複期間の19年を空けないと控除が適用できないというルールが存在します。これを”19年ルール”と言います。
そのため、AさんとBさんはiDeCoの重複期間の控除が使えません。

今回10年ルールに変更されたことで、iDeCoの受け取り年齢が60歳から75歳であることを踏まえると、退職所得控除を最大限活用するためには、「iDeCoを60歳で受け取り、退職金を70歳で受け取る」又は「退職金を55歳で受け取り、iDeCoを75歳で受け取る」必要がでてきたのです。

iDeCoに向いている人と向いていない人

退職金制度が十分ではない中小企業に勤めている人や個人事業主、将来貰える年金が少ないと予想される人には引き続き魅力的な制度でしょう。しかし、退職金制度が充実している大企業に勤めている人や小規模企業共済の掛金が多い人、退職を70歳まで伸ばせない人には税制上のメリットが薄くなるため向いてないと言えるでしょう。

おわりに

いかがでしたが? 厚生労働省が老後生活への備えとして推進する制度ではありますが、財務省の税制優遇を公平にするというスタンスにより、一部の人にはメリットが薄れる形となりました。得られる恩恵と注意すべき点を踏まえて、より賢くiDeCoを活用していきましょう。

【参考資料】
財務省『令和7年度税制改正大綱

執筆者:鍛治田祐子

■ファイナンシャルプランナー

【保有資格】CFP®認定者 1級ファイナンシャルプランニング技能士

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