株式市場は常に移り変わります。ある時期には成長株が注目され、また別の時期には資源株や金融株が買われます。なぜこのように移り変わるのでしょうか?
その大きな理由は景気と金利です。景気が拡大しているのか、それとも後退しているのか。そして、中央銀行が金利を引き上げているのか、引き下げているのか。この組み合わせによって、投資家がどの資産を選好するかが大きく変わってきます。
今回は、この2つの動きがどのように相場に影響し、投資先が変わるのかをわかりやすく解説します。
景気と金利
経済には、良い時と悪い時が交互にやってくる波のような流れがあります。この波をうまく乗りこなすことが、成功へのカギです。この波を判断するうえで欠かせないのが、景気と金利という2つの視点です。
景気とは、経済全体の活動水準を示す言葉で、GDP成長率、雇用統計、消費者物価指数(CPI)などを通じて測ることができます。景気が拡大すれば企業の売上は伸び、雇用は増え、人々の消費も活発になります。逆に景気が後退すると企業業績は悪化し、雇用や消費も冷え込みます。
一方、金利は、お金の貸し借りにかかるコストです。中央銀行が政策金利を上下させることで、市場全体に影響を与えます。景気が過熱し物価が上がりすぎれば中央銀行は利上げを行い、逆に景気が悪化すれば利下げを行います。つまり金利は、景気の調整役といえます。
株式市場は将来を先取りして動くため、景気が悪化している最中に株価が反転上昇することもあります。そのため、投資家は景気と金利の動きが次にどうなるかを常に意識して、相場を読み解く必要があるのです。
4つの相場パターンと投資対象の変化
景気と金利の組み合わせによって相場がどのように動くのか、典型的なパターンを整理してみましょう。
景気が悪く、金利も低い時
景気が悪化すると、企業の業績は落ち込み、雇用や賃金も削減され、消費が冷え込むという悪循環に陥ります。このままでは経済が立ち直らないため、国は金利を下げることで、市場にお金を流し、消費や投資を後押ししようとします。
こうした雇用や物価などの経済指標が厳しく、景気の底が見えない段階では、大きな利益を狙うのは危険です。この時期は、私たちの生活に欠かせない業種であるディフェンシブ株が投資対象として選ばれやすくなります。例えば、食品や日用品といった生活必需品、電力やガスといったインフラ関連などが相対的に強くなります。また、次の景気回復に備えて、無理に投資せずに現金を確保しておくことも大切です。
やがて、景気の底打ちが見え始め、株式市場も悪いニュースに過敏に反応しなくなるタイミングで、これから大きく伸びそうな成長株や、景気が良くなると儲かる、化学や鉄鋼、自動車といった景気敏感株に少しずつ投資を始めるのが狙い目です。ただし、景気回復が本物になるかはまだ不透明なので、守りのディフェンシブ株を残しつつ慎重に動くのがポイントです。
景気が良くなり始めたが、金利はまだ低い時
経済指標が回復し始め、景気が上向きつつある局面です。金利は低水準に据え置かれたままなので、企業は資金調達しやすく、新規事業や設備投資が盛んになります。
この時期は、赤字であっても将来性に期待が集まる小型グロース株が強くなります。特に、AI・クラウド・SaaS といった新しい技術やビジネスモデルを持つ企業に勢いが集まります。
ただし、株価が大きく上昇する段階になると、現在の会社の利益と株価の間にギャップが生まれるため、割高に感じられるようになるかもしれません。さらに、景気の回復が鮮明になれば、物価上昇が見え、中央銀行は利上げを意識し始めます。もし、金利が上がれば、株式市場にとっては逆風となるため、利益を確実に出している大型テック株へ投資先を切り替えると安心感が増します。
景気は絶好調で、金利が上がり始めた時
景気が力強く成長し、企業の利益も大きく伸びて消費も活発になります。しかし、消費が活発になることで需要が供給を上回ればインフレが進みます。中央銀行はインフレを抑えるために利上げに動きますが、これにより企業の資金調達コストは上昇し、個人投資家の資金は国債や預金といった相対的に利回りの魅力が増す安全資産へと流れやすくなります。その結果、株式市場には資金が入りにくくなり、好調な景気という追い風がありながらも、利上げによる逆風が同時に働く状況となります。
この時期に注目されやすいのは、インフレの影響を受けにくい素材・エネルギー・工業などの業種です。
やがて利上げが進むと、企業の資金調達コストは上昇し、業績も伸び悩み始めます。収益基盤が弱い成長株はリスクが高まるため、代わりに金融業や、割安なバリュー株に重きを置く戦略が有効です。
景気は落ち気味なのに、金利が高い時
消費は低迷している一方で、物価は高止まりしているという二重苦の局面です。企業は売上が伸びないのに加え、コストが増すため業績が圧迫されます。中央銀行もインフレを抑えるために容易に金利を下げられず、投資環境は厳しくなります。
この時期は、景気停滞とインフレが同時に進むスタグフレーションの懸念が強まるため、医薬品など需要が安定しているヘルスケア関連や、参入障壁が高い大手通信といった比較的手堅い分野が相対的に評価されます。また、現金の価値の目減りを防ぐ手段として、株式から債券や金(ゴールド)などの安全資産へ資金を移す戦略も有効です。
おわりに
実際の相場は、政治や国際情勢など外部要因の影響を強く受けるため、必ずしもこの基本パターン通りには動きません。しかし、株価の上げ下げの裏に景気と金利という大きな流れがあることを理解すれば、短期的なニュースに振り回されずに済みます。そして、この流れを意識することで「いまはどの局面に近いのか」「次に来るのはどんな相場か」といった見方ができるようになります。相場の変動に振り回されず、景気と金利の流れを軸にした長期的な投資判断を心がけましょう。
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